クライオセラピー(Cryotherapy) は、極低温(-120℃)という環境で身体を冷却する療法で、疲労回復、筋肉痛の軽減、炎症の抑制などに効果があるとされています。その中でも、運動後の乳酸値の低下をサポートする点が注目されています。乳酸値のコントロールは、アスリートだけでなく、日常的に運動をする人々にとっても重要なテーマです。
本稿では、乳酸値と疲労の関係、クライオセラピーが乳酸値に及ぼす影響、具体的な活用法や科学的根拠について詳しく解説します。
1. 乳酸とは?

乳酸は、私たちの体がエネルギーを作り出す過程で生成される副産物です。特に高強度の運動中に筋肉で発生し、疲労や筋肉痛の原因とされることがあります。
1.1 乳酸の生成プロセス
- 運動中、筋肉はグルコースを分解してエネルギー(ATP)を作り出します。これを解糖系と呼びます。
- 酸素が十分に供給されない状態では、グルコースの分解が不完全となり、乳酸が生成されます。
1.2 乳酸値の上昇と疲労
- 運動強度が上がると、乳酸値が急激に上昇し、筋肉内の酸性度が増加します(乳酸性アシドーシス)。これにより、筋肉の収縮力が低下し、疲労感が生じます。
- 一方で、乳酸は体内で再利用され、エネルギーとして活用されることもあります。
2. クライオセラピーが乳酸値に与える影響

クライオセラピーは、運動後に乳酸値の低下を助け、筋肉の回復を促進する有力な手段です。以下は、そのメカニズムを詳しく見ていきます。
2.1 血流促進による乳酸の除去
- クライオセラピーでは、冷却による血管の収縮と、その後の急激な血流増加(リバウンド効果)が起こります。このプロセスにより、乳酸や老廃物が筋肉から効率的に除去されます。
- 血流が促進されることで、乳酸は肝臓で再利用される(コリ回路)か、他の筋肉でエネルギーとして使用されます。
2.2 炎症抑制による疲労軽減
- 極低温刺激は、筋肉内の炎症性物質(例えばサイトカイン)を抑制し、疲労感を軽減します。これにより、乳酸性アシドーシスによる筋肉痛の感覚が緩和されます。
2.3 乳酸値低下の科学的証拠
- クライオセラピー後の乳酸値低下に関する研究では、施術を受けたグループは受けていないグループに比べて、乳酸値の回復が早いことが示されています。
- 具体例:運動直後にクライオセラピーを受けたアスリートの乳酸値が30分以内に基準値近くまで低下したというデータがあります。
3. クライオセラピーの乳酸値コントロールにおける具体的な効果

3.1 運動後の疲労回復
クライオセラピーは、筋肉に蓄積した乳酸を迅速に除去し、運動後の疲労感を軽減します。
- 効果の例:マラソンランナーやサッカー選手が、試合後にクライオセラピーを利用することで、次の日の筋肉痛が大幅に軽減されたという報告があります。
3.2 筋肉痛の軽減(DOMSへの効果)
- DOMS(遅発性筋肉痛)は運動後24~72時間に発生しますが、クライオセラピーは乳酸の迅速な除去と炎症抑制により、この痛みを軽減します。
- 例えば、ウエイトトレーニングを行った後にクライオセラピーを受けた場合、筋肉痛の発生頻度と強度が大幅に低下します。
3.3 持久力パフォーマンスの向上
- 乳酸値が素早く回復することで、連続したトレーニングや試合における持久力パフォーマンスが向上します。
- 例えば、1週間に複数試合を行うプロスポーツ選手にとって、クライオセラピーはコンディショニングの一環として取り入れられています。
4. クライオセラピーと乳酸値管理の具体的な利用法

4.1 全身クライオセラピー
- 施術内容:CRYOBATHに入り、-120℃の環境に2~3分間身体をさらします。
- 効果:全身の血流が促進され、乳酸の代謝が効率化されます。
4.2 部分クライオセラピー
- 施術内容:特に乳酸が蓄積している部位(ふくらはぎ)を集中的に冷却します。
- 効果:局所的な乳酸除去が進み、筋肉痛や張りが軽減されます。
4.3 運動後30分以内の施術が効果的
- 運動後30分以内にクライオセラピーを受けることで、乳酸除去効果が最大化されると言われています。
5. 科学的根拠と事例

5.1 研究事例
- 研究1:プロアスリートの乳酸値回復
サッカー選手を対象にした研究では、90分間の試合後にクライオセラピーを受けたグループは、乳酸値の回復が20%速かったという結果が示されました。 - 研究2:筋肉痛への影響
48時間の筋肉回復テストで、クライオセラピーを受けたグループの方がDOMSの強度が40%低下したという報告があります。
5.2 実際の利用事例
①陸上競技選手の場合
背景
- 競技種目:5,000mランナー
- 課題:高強度トレーニング後の乳酸値の上昇が原因で、翌日の練習に影響が出ることが多かった。
クライオセラピーの導入
- トレーニング後30分以内に全身クライオセラピーを受けることを週3回実施。施術時間は約2分。
結果
- 乳酸値の回復が約25%早まり、トレーニング翌日の疲労感が軽減されます。
- 「連続する高強度トレーニングでもクライオセラピーのおかげで体調を維持でき、最高のパフォーマンスが発揮できました。」(30代男性)
②プロサッカー選手の場合
背景
- ポジション:フォワード
- 課題:週に複数回試合が続く過密日程で、筋肉の乳酸不足がパフォーマンスに影響を与える。
クライオセラピーの導入
- 試合直後に専用クライオセラピーチャンバーで全身を3分間冷却する施術を実施。チーム全体で頑張ってリカバリープログラムを採用。
結果
- 試合翌日の練習復帰がスムーズになり、疲労感が大幅に軽減されました。
- 「クライオセラピーは試合後のリカバリーに欠かせない存在です。乳酸がスムーズに流れ、筋肉が軽くなるのを実感しています。」(28歳男性プロサッカー選手)
③ウエイトリフティング選手の場合
背景
- 課題:高重量トレーニングによる乳酸値の上昇と、それに伴う筋肉の張りが原因で、次のトレーニングに出ていました。
クライオセラピーの導入
- 大腿四頭筋やハムストリングスを中心に、部分クライオセラピーを週2回施術。
結果
- 筋肉の回復ーが急速に変化し、週に5回以上の高筋力トレーニングが可能に。
- 「乳酸がたまり辛くなって、トレーニング後の筋肉痛も軽減されました。自己記録更新のために欠かせないケア方法です。」(25歳女性ウエイトリフティング選手)
④マラソンランナーの場合
背景
- 目標:フルマラソン大会への出場。練習での乳酸値上昇が課題で、長距離練習後の疲労感が抜けにくかった。
クライオセラピーの導入
- 長時間ランニング後、全身クライオセラピーを週1回ご利用。大会直前にもリフレッシュ目的で施術。
結果
- 練習後の回復が早まり、体調を整えた状態で大会に出場。
- 「クライオセラピーを始めてから、乳酸値が上がっても回復が早くなり、練習の質が向上しました。レース当日も最高の覚悟で挑みました。」(男性32歳アマチュアマラソンランナー)
⑤プロバスケットボール選手の場合
背景
- ポジション:フォワード
- 課題:試合後の疲労が解消され、翌日のパフォーマンス低下を防ぐ必要がある。
クライオセラピーの導入
- 試合終了後2時間以内に全身クライオセラピーを実施。 特に脚部の回復ーに焦点を当てた施術を採用。
結果
- 試合翌日の練習でのパフォーマンスが安定し、疲労感が軽減。
- 「試合後のクライオセラピーは体に新鮮さをどんどん与えてくれる感覚があります。乳酸が効率よく流れ、次の試合でも力を出し切れる準備ができます。」(29歳男性プロバスケットボール選手)
⑥スイマーの場合
背景
- 競技種目:短距離自由形
- 課題: 激しいトレーニング後に乳酸値が急上昇し、回復がかかることが課題です。
クライオセラピーの導入
- 練習後のクールダウンとして、全身クライオセラピーを週3回利用。乳酸除去を目的としたプログラムを選択。
結果
- トレーニング翌日の疲労感が軽減し、記録更新につながる集中力が向上。
- 「クライオセラピーはスイミングに必要な筋力と回復力を考えるために常に存在します。乳酸の原因の筋肉痛はほとんど感じられませんでした。」(24歳女性 スイマー)
6. クライオセラピーと乳酸値管理の未来

6.1 AIとデータの活用
ウェアラブルデバイスと連動し、リアルタイムで乳酸値をモニタリングしながら最適な冷却プログラムを提供する技術が期待されます。
6.2 家庭用クライオセラピー装置の普及
手軽に乳酸値管理ができる家庭用デバイスが開発され、運動後のケアがより簡単に行えるようになるでしょう。
6.3 医療分野への応用
乳酸性アシドーシスが関与する病態(例えば慢性疲労症候群や筋疾患)の治療補助として、クライオセラピーが採用される可能性があります。
結論

クライオセラピーは、乳酸値の迅速な除去や筋肉痛の軽減、持久力向上など、運動後のリ
カバリーにおいて極めて有効な方法です。科学的根拠に基づくメカニズムと多様な応用法により、アスリートだけでなく一般の人々にも広がりつつあります。今後の技術革新と普及が進むことで、さらに多くの人がその恩恵を受けることが期待されます。
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