近年、スポーツ選手の健康維持とパフォーマンス向上に注目されているのがクライオセラピーです。
超低温環境下で全身を冷却することで、筋肉の回復力を高め、血行を良好に保ち、酸素供給などの効果が高まることが期待されています。
海外のトップアスリートも取り入れており、科学的根拠も蓄積されつつあります。本記事では、クライオセラピーの効果について詳しく解説します。
クライオセラピーとは?スポーツ選手に注目される全身冷却療法
クライオセラピー(Cryotherapy)とは、打撲や捻挫、高強度の運動などによる組織炎症が起こった部分を冷却することにより、回復力を高める効果が期待できるとされる療法です。
狭義的には冷凍療法や凍結療法などとも表現され、液体窒素などを使用したー100℃以上の超低温療法を指すこともありますが、アイシングなどの氷のうやアイスパックを使用した冷却方法、アイスバスもクライオセラピーの一種です。
クライオセラピーは、筋肉の酷使などで起きた炎症を様々な方法により冷やすことで、患部の熱を取り、炎症レベルを低下させることで痛みや浮腫を軽減します。
さらに、細胞を冷やすことで酸素や栄養の余分な消費を抑えます。冷却を終えた後には、血流が元に戻ろうとするため、ダメージのある場所にそれらを供給することができるように。これにより二次的酸素傷害を低く抑える効果が期待できるのです。
海外のトップアスリートたちのなかには、全身を冷やす全身冷却療法(Whole Body Cryotherapy:WBC)を取り入れている人もいます。
例えば、ラグビーの代表チーム、サッカーの代表チーム、ツール・ド・フランスの出場チーム、アメリカンフットボールのプロチーム、バスケットボールのプロチーム、プロ野球チーム、プロボクシング選手など多くのアスリートが活用しているのです。
クライオセラピーは、体を冷やすことでパフォーマンスの回復を早めることで知られています。トップアスリートにとって、低下したパフォーマンスをいかに早く向上させるかは大きな課題です。クライオセラピーは、スポーツ選手のパフォーマンス向上のサポートとして注目されている療法なのです。
スポーツ界での活用状況
クライオセラピーは、スポーツ界で注目されています。例えば、以下のようなスポーツチームや選手がクライオセラピーを活用しています。
- サッカーの代表チーム
- ラグビーの代表チーム
- ツールドフランスの出場チーム
- アメリカンフットボールのプロチーム
- バスケットボールのプロチーム
- プロ野球チーム
- プロボクシング選手
- テニス選手
- 陸上競技選手
- プロゴルファー
- トライアスロン選手
- 格闘家
これらのアスリートは、筋肉疲労の軽減やケガの予防、パフォーマンスを回復させるためのサポートなどを目的として、試合後や練習後にクライオセラピーを行っています。
日本でも、ラグビー日本代表がフィジー代表との試合後にクライオサウナを利用するなど、徐々に活用が広がりつつあります。一般的には、ランニング後やスポーツジムでのトレーニング後に受けることで、身体のリカバリー効果が期待できます。
海外のアスリートの間ではすでに常識となっているクライオセラピーは、今後日本のスポーツ界でもさらに普及していくことが予想されます。トップアスリートにとって、低下したパフォーマンスをいかに早く向上させるかは大きな課題であり、クライオセラピーはその解決策の一つとして注目を集めているのです。
クライオセラピーがスポーツ選手の健康維持とパフォーマンス向上に期待される効果
クライオセラピーは、スポーツ選手のパフォーマンス向上へのサポート効果が期待されています。以下に、その主な効果について解説します。
筋肉の回復をサポート
クライオセラピーは、筋肉の酷使や傷めるなどで起きた炎症を様々な方法により冷やす事により、患部の熱を取り、炎症レベルを低下させることに役立ちます。そのため激しい運動後にクライオセラピーを行うことで、筋肉の分解や炎症反応に伴う酸化ストレスを軽減できる可能性があります。これにより、筋肉の回復がサポートされ、次の試合やトレーニングに向けたコンディショニングに役立ちます。
血行のサポートと酸素供給
クライオセラピーは、血行をサポートし、酸素や栄養の供給を助ける効果が期待されています。
クライオセラピーの冷却により血管が収縮しますが、クライオセラピーを完了した後には、
血管の拡張によって血流が元に戻ります。この血流の変化により、体内の老廃物が押し流され、新鮮な酸素と栄養が供給されやすくなるのです。
また、細胞を冷やすことで一時的に代謝が下がり、ダメージを受けた場所へ酸素や栄養を優先的に供給できるようになります。これにより、疲労回復がサポートされると考えられています。
このように、クライオセラピーによる血流の変化と酸素供給は、アスリートのパフォーマンスの回復をサポートするメリットが示唆されています。ただし、その分子メカニズムについてはまだ不明な点も多く、今後のさらなる研究が待たれるところです。
クライオセラピーの科学的根拠
近年、クライオセラピーの効果について科学的な研究が進められています。ここでは、クライオセラピーの科学的根拠について、最新の研究結果を交えて解説します。
皮膚温と筋温の変化
2012年11月6日に公開された調査結果(※)では、-110°C 全身凍結療法 (WBC)と8°C 冷水浸漬 (CWI) が比較されています。調査には、男性20名が参加し4 分間の曝露をしました。
この調査では、筋肉温度、皮膚温度が、治療前と治療後 60 分でどのように変化したのかが記録されています。
皮膚温度の調査結果
皮膚温度の区分 | ||
最高温度 | 8.8±2.0°C | 7.2±1.9°C |
平均温度 | 12.1±1.0°C | 8.4±0.7°C |
最低温度 | 13.2±1.4°C | 8.7±0.7°C |
筋肉温度の調査結果
調査した筋肉の深さ | WBC | CWI |
深さ1cm | 1.6±1.2°C | 2.0±1.0°C |
深さ2cm | 1.2±0.7°C | 1.7±0.9°C |
深さ3cm | 1.6±0.6°C | 1.7±0.5°C |
クライオセラピー(WBC)と冷水を使用した冷却(CWI)はいずれも、皮膚温度を有意に低下させました。また、全身を冷やすWBCは、冷水を使用したCWIよりも皮膚温度が低下することが分かりました。筋肉温度も、WBCとCWIでは同程度の低下がみられることが実証されています。
※出典:NCBI「−110°Cの冷気と8°Cの水処理後の筋肉、皮膚、体幹温度」参照:2024.08.13
最新の研究結果
近年、クライオセラピーの効果について様々な研究が行われています。ここでは、最新の研究結果について紹介します。
酸化ストレスの軽減と筋肉の分解抑制
研究結果によると、WBCは、運動による筋肉の分解や炎症過程で起こる反応である酸化ストレスを軽減することで効果を発揮するとのことです。激しい運動後のクライオセラピーは、筋肉の損傷や炎症を抑制する可能性が示唆されています。
クライオセラピーを簡単に体験できるクライオバス
クライオセラピーは、極低温への短時間の暴露で、スポーツ選手のパフォーマンスの向上やダメージからの回復をサポートする効果が期待されるとして注目されています。
クライオセラピーを手軽に体験するには、着衣のまま利用できるクライオバスがおすすめです。
クライオバスとは約3分間、首から下の身体全体を最高到達点約-120℃の超低温環境の中に安全に浸すことのできる浴槽です。皮膚表面を最高到達点約-120℃という超低温で一気に冷却し、一時的に血流の流れを抑制することが可能。冷却後、定常温度に戻った際に血流が大きく増幅するため、身体の機能をサポートする、さまざまな効果が期待できます。
WBCよりも設置が簡単なため、これまでに多くのアスリートにご利用いただいているほか、今後、医療や美容の分野でも活用が期待されています。
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